英語の授業で最初に習う言葉。でもネイティブはほとんど使わない。
英語を学び始めた多くの日本人が最初に覚えるフレーズ。
“How are you?”
“I’m fine, thank you. And you?”
今でも教科書に載るこの定番のやり取り。
けれど、実際の英語圏では、意外にもこのやり取りをほとんど耳にしません。
ネイティブの人々がよく使うのは、“I’m good.”や“Pretty good.”など、もう少し柔らかい言葉です。
“I’m fine.”がもつ本当の意味
“I’m fine.”は一見ポジティブに聞こえます。
けれど、その裏には「これ以上は踏み込まないで」という小さな壁が隠れていることがあります。
アメリカでは家族や友人との会話では感情を率直に出す人が多いです。しかし、公共の場やビジネスの場では感情をストレートに表すよりも、距離を保ちながら穏やかに話すことが礼儀とされます。
そのため、“I’m fine.”は「もう話を終わらせたい」というサインとして使われることも少なくありません。
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日本語の「大丈夫」と重なるニュアンス
日本語の「大丈夫です」も、時に同じような働きをします。
本当は大丈夫でなくても、相手に心配をかけたくないとき。
あるいは、これ以上掘り下げられたくないとき。
言語は違っても、どちらも「心の距離を保つためのクッション」。
“I’m fine.”と「大丈夫です」には、人との関係を保つための優しさが潜んでいます。
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言葉の奥にある沈黙
英語には、“Not bad.”や“Pretty good.”のように、
ポジティブすぎずネガティブすぎない“中間の表現”が数多くあります。
“I’m fine.”もその一つ。
明るく聞こえても、その中には「今は感情を整理している途中」という静かな想いが流れています。

編集後記:その笑顔の奥にある、やさしさ
“I’m fine.”という言葉を口にするとき、
私たちはもしかすると、誰かを安心させようとしているのかもしれません。
たとえ心の奥が少しざわついていても、
その一言には「大丈夫でいたい」という願いが込められています。
言葉は、他人に向けるものでもあり、
同時に自分自身を守るための、小さな祈りでもあるのです。
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文:Zawats編集部(言葉のざわつき担当)
